2011年03月23日

『罹災都市借地借家臨時処理法』講義案


4月27日後半部分
第25回 行政書士公法研究会 後半
『震災と借地借家法』
〜罹災都市借地借家臨時処理法を知る。〜
の講義案です。

講義についてのお問い合わせのある方は
是非
行政書士 山賀 良彦まで、ご連絡ください。



第25回 行政書士公法研究会 後半
『震災と借地借家法』
〜罹災都市借地借家臨時処理法を知る。〜

報告者 行政書士 山賀 良彦(北支部)
平成23年4月27日


一、罹災都市借地借家臨時処理法について
0.「罹災」と「被災」の意味

1.罹災都市借地借家臨時処理法とは

(1)「罹災都市の借地人・借家人を保護し、
罹災都市の復興を促進するため」の法律」で、
「借家もしくは借地上建物が「滅失」した場合の
法律関係について定めた法律」
<法学セミナー486p32>

(2)「被災住民が元居住していた町や地域に
戻れる方向での借地借家の権利関係
の調整を
狙いとしたものであり、
その中で、借地人・借家人の権利保護を図ろ
うということが主眼」<山内p3>

→昭和21年制定。当初は戦災対策。
後に、火災、震災、風水害その他の災害にも準
用される。


2.近時の適用<意見書p2>
1995(平成 7)年 1月17日 阪神・淡路大震災
2004(平成16)年10月23日 新潟県中越地震


3.今回の震災への適用、今後の展開
→読売新聞等のHP あるいは、法務省等の頁をチェック
→当日までの資料


二、沿革(法セミ486p32、法学教室175p46-7、意見書)
1.「罹災都市借地借家臨時処理法」関連法規
1908 建物保護ニ関スル法律(明治42年5月21日法律第40号)

1921 旧借地法(大正10年4月8日法律第49号)
旧借家法(大正10年4月8日法律第50号)

1922 借地借家調停法(大正11年法律第41号)
→1951廃止、民事調停法へ

1923 関東大震災(大正12年9月1日)

1924 借地借家臨時処理法
(大正13年7月22日法律第16号)

1945 戦時緊急措置法
(昭和20年法律第38号。
昭和20年6月22日公布、同23日施行)
→昭和21年4月1日廃止

戦時罹災土地物件令
(勅令第411号昭和20年7月12日公布・施行)
→罹災者の住宅確保と罹災地の借地関係の調整を図る。
<紀要p28>
→昭和21年9月15日廃止

1946 罹災都市借地借家臨時処理法
(昭和21年8月27日法律第13号)
→同年9月15日施行

1947 法律第106号(昭22年9月13日)
→戦災以外の、法律で定める火災、震災、
風水害その他の災害のため滅失した建物
がある場合にも準用。→25条の2の文言追加。
→昭和南海地震(昭和21年12月21日)に適用される
(昭和22年12月10日)。
その後、伊勢湾台風、富山県の火災等にも適用される。

1956 法律第110号(昭和31年5月21日改正)
→適用される災害を「政令」により指定(第25条の2)。

1991 借地借家法(平成3年10月4日法律第90号)
→平成4年8月1日施行
→同年7月31日までで、
旧建物保護法、旧借地法、旧借家法、廃止。

1995 阪神・淡路大震災(平成7年1月17日)
→政令第16号(平成7年2月6日公布・施行)
→同日が各種期間の起算点(第25条の2)
→適用地区(大阪府と兵庫県の33市町村)を指定

2004 新潟中越地震(平成16年10月23日)
政令第160号(平成17年4月15日公布・施行)
→適用地区(長岡市等の7市3町村)を指定


2.適用関係<教室175p46、詳しいp3>
(1)
@個々の借地・借家契約
A罹災都市借地借家臨時処理法
B旧建物保護法 C旧借地法 D旧借家法
E借地借家法
F民法


(2)借地・借家法関係の旧法と新法との適用関係
<詳しいp2,4-5>
@概略
→平成4年8月1日以降に締結された契約=借地借家法
→平成4年7月31日までに締結された契約
=旧借地法、旧借家法、旧建物保護法

A詳細
→借地借家法附則4条
=原則、借地借家法は施行以前の事項にも適用有。

→しかし、特別の定め(借地借家法附則第5条から第14条)
のある場合には、旧法の適用がある。

→結果、重要な部分(存続期間、更新等について)に旧法の
適用があることに(例:借地借家法附則第6条)。


三、罹災都市借地借家臨時処理法について

1.適用の可否の検討(罹災都市借地借家臨時処理法第25条の2)
(1)時 :戦災及び火災、震災、風水害その他の政令の定める災害
(2)場面:上記災害によって建物が「滅失」した場面
(3)範囲:借地借家関係
(4)特徴:
@借地関係
ア)対抗力の存続(第10条)
イ)契約期間の伸長(第11条)

A借家関係
ウ)建物優先賃借権(第14条)
エ)敷地優先賃借権(第2条、第3条)


2.罹災都市借地借家臨時処理法の適用上の問題について
→法は「滅失」の場合に適用される。
(1)滅失有
→個別の契約・民法・借地借家関連法・罹災都市借地借家臨時処理法

(2)滅失無
→個別の契約・民法・借地借家関連法

(3)注意点
罹災都市借地借家臨時処理法17条


3.滅失の判定
(1)滅失の基準(どの程度まで損傷した場合をいうのか?)。
→「建物の物理的な損壊だけではなくて、
経済的な価値の喪失なども含む」。
@「判例上、建物の主要な部分が消失して
賃貸借の趣旨が達成されない程度に達
したかどうかが基準になる」。<法学セミ485p15>
「修復に多額の費用を要するかどうかも判断の要素になる」。

A「建物の物理的形状(倒壊してるか、
建物の駆体部分の損傷があるかなど、
社会経済的に建物としての効用を失ったかどうか
(建ててからの年数、耐用年数、補修の可能性、補修費用、
新築費用・従前賃料との比較、居住の意思などからみて)
が考慮されることになる。」(判例タイムズ879p8)


(2)立場、状況によって判断が変わりうる。
公費による取り壊し補助金が出るから壊したい。
滅失による賃貸借契約の終了=公営住宅の入居要件に


(3)罹災証明書とのズレ


(4)参考判例
最高裁昭和32年12月3日
最高裁昭和42年6月22日


四、借地

0.検討すべき内容
→再築の権利と居住の安心を考える。
:罹災都市借地借家臨時処理法の適用の有無、土地の修繕、
借地権の存続、再築の可否、契約期間・契約更新の有無、対抗力の有無


1.借地上の建物が滅失にいたらなかった場合
(1)修繕の有無(ジュリ1070p153)
@地上権の場合
→土地所有者の修繕義務無

A賃借権の場合
→原則、土地所有者の修繕義務有(民606条)
→しかし、負担しきれない場合には、履行不能として、
賃料減額(民606条)、または、
契約消滅も<ジュリ1070p153>

Bその他
ア)増改築特約の問題<WEBQ22>
→特約自体は有効。ただし、合理的な範囲内で。
一切の増改築を禁じるものは無効。
→原則、承諾を得なくても増改築可。→注:信頼関係の破壊。

イ)賃料減額請求の問題
→借地法12条の適用の可否


2.建物が滅失した場合
(1)借地権存続(旧借地法7条、借地借家法7条)
→期間満了まで利用可能
→地震による滅失=朽廃に当たらず(旧借地法2条)


(2)契約期間
滅失でも借地権は存続=期間満了まで利用できる。
→罹災法11条の適用無=残余期間
←再築に対する異議の有無・再築建物の構造等で期間が変わりうる
(後述(3)B)。
→罹災法11条の適用有=10年/残余期間が10年以上ならば残余期間
→注:再築がないと、法定更新が困難に(後述(3)2)。


(3)再築の意義

@再築について
ア)再築は可能(旧借地法7条、借地借家法7条)。+承諾不要。
イ)Q再築禁止特約があった場合
→旧借地法7条、借地借家法7条
=建物が滅失した場合に残存期間を超えて存続する建
物を建てることを前提とした規定の存在。
→それを否定する特約の効力は無効<Q&Ap5>。

→用途、構造の変更等に関し信頼関係の破壊に注意。
←実際には、賃貸人の承諾を得る必要も。
特に、建て替えのローンに地主の承諾を要するケースも。


A再築と法定更新
ア)再築=法定更新に必要
(旧借地法4条T、6条U、借地借家法5条T、U)
→残余期間が短いときに事実上再築が不可能になり、
契約終了のおそれがある。→罹災法11条の意義大
<法セミ497p43>


イ)再築なきとき
→契約期間満了時において法定更新が困難に
(旧借地法4条T、6条U、借地借家法5条T、U)
→契約期間満了→更新に対する異議有→法定更新が出来なくなる。


ウ)再築に対する異議がある場合
→再築後の契約期間延長のメリットが受けられない。
→以下、Bへ


B再築に対する異議の有無と契約期間、更新について
ア)再築に対する異議有(旧借地法7条、借地借家法7条T・U)
→契約期間延長されない(旧法20年・30年、新法20年にはならない)。
@)契約期間
罹災法11条の適用有→10年に/残余10年より長い=残余期間
罹災法11条の適用無→残余期間に。
A)契約期間満了の更新時(旧借地法4条、6条「正当事由」の有無が問題に)


イ)再築に対する異議無
@)契約期間
罹災法11条の適用無→旧借地法7条(20年・30年に)、新法7条(20年)
<なお、新法では承諾の問題もある。Q&Ap7>

罹災法11条の適用有=再築の異議無+罹災法11条の適用有→Q


Q:この場合の再築について、旧借地法7条の適用の可否
→再築後の契約期間が旧借地法で20年、30年になるか?
それとも、罹災法11条の10年のままか?
→最高裁×/学説〇?
(なお、新法適用のケースなら新法7条の要件にも関わる。)

A)契約期間満了の更新時(旧借地法4条、6条「正当事由」の有無が問題に)

C法律と実際上の問題
→再築のための資金調達の難しさ<法セミ497p43>
→法的には再築に関する承諾は不要。
しかし、実際上は特約等により地主の承諾を得る必要も。


(4)対抗力
@地上権の登記、賃借権の登記、旧建物保護法1条
→滅失したまま=対抗力が失われる。
A対抗するために

ア)掲示による対抗(借地借家法10条T、U)
→事実上不可能な場合も<民商p646>

イ)罹災法第10条(5年間の対抗力)
→5年間、再築不要で対抗できる。=建物収去・建物建築禁止請求可
→取引の安全上の問題も指摘される<法セミ497p43>。
→対抗力の継続には5年以内に再築必要

(5)借地権の譲渡<AQ&A47>
→建物がないと譲渡・転売が不可→放棄するケースも。


(6)終了(罹災法12条)→催告権

(7)その他
使用貸借<民商p652>→個々の契約による。



五、借家
1.建物が滅失しているか否か
(1)滅失について
@三、3.
A滅失の有無による帰結
建物滅失有=契約消滅+罹災法適用有
建物滅失無=契約存続→罹災法適用無


(2)問題点
@滅失に関する主観的な相違→修繕可VS修繕不可
阪神大震災の例
@)多くのケース:家主側=滅失を主張、借家人側=修繕を要求
A)罹災法適用決定後:
借家人側=滅失を主張、家主側=争うケースも。
<法律時報67巻9号p33>

A滅失の認定について
→損傷・毀損の程度→解約申し入れにおける正当事由の有無の判定の要素
→正当事由<近Q&Ap 17>


2.一部滅失、損傷、損壊の場合
(0)検討すべき内容
修繕義務、賃料支払義務、解約、正当事由、立退料。


(1)建物滅失無=契約存続→罹災法適用無
→契約、民法、旧借家法、借地借家法の適用


(2)修繕義務(民法606条)<法セミ485p16>
→損壊の程度によっては修繕義務の認められない場合も<法セミp485p16>
=解約申し入れに正当事由が生じることも。<AQ&A38>
@問題点
ア)修繕特約
→大修繕も賃借人が行うとの特約<近Q&Ap30>。
A:小修繕の限りで有効。
←賃貸人の修繕義務は免れえない<法セミ485p16>。

イ)借家人による修繕(必要費の問題に(民608条))
→家主への通告義務(民法615条)・家主との信頼関係


(3)賃料支払債務
@賃料減額(民法611条T、借地借家法)
→修繕しない場合=賃料減額請求
→建物居住不可=賃料支払義務無(民536条)、
場合により契約解除(民611条U)も。
→判断の困難さ<法セミ485p16>

A問題
ア)電気・ガス等ライフラインのストップと賃料支払義務
→民法536条と借家人の利用の状況の検討
→居住できるのであれば賃料支払義務がある<法セミ485p17>
←反対意見も(詳しい)

イ)避難命令と賃料支払義務


(4)解約申し入れ、立退請求と立退料<法セミ485p17、Q21p21>
→明確に滅失していれば契約消滅。=借地権消滅+立退料不要
→過大な修繕費用が必要=解約の正当事由になることも。立退料不要
→しかし、不明確であれば争いに。→立退料が解約の正当事由の補完要素に。


3.建物滅失有=契約消滅+罹災法適用有
(0)検討すべき内容
借家契約消滅による法的整理と
罹災都市借地借家臨時処理法の適用による法的問題


(1)@賃貸人:目的物を使用・収益させる義務消滅、敷金返還義務発生
→地震による滅失=不可抗力→債務不履行無
注:なお、たとえ欠陥等の賃貸人の債務不履行があっても、
賃貸借契約は消滅。事後は、
損害賠償の問題で考えるべきものと解される。

A賃借人:賃料支払債務消滅、家財搬出義務(原状回復義務)発生

(2)敷金等の取扱い
@滅失=契約終了→原則、敷金の返還請求可
(→滞納があるケースは控除される)

A問題点
ア)不返還特約→無効<近Q&Ap18、法セミ485p14、コピーQ42>

イ)敷引きの可否(特約の効力)<法セミ485p15>
→性格、実態から判断すべきか=賃料の前払的、礼金的

ウ)権利金の返還義務<法セミ485p14>
→性格、実態から判断すべきか=賃料の前払的、礼金的

エ)敷金承継→借家権の相続と敷金の相続

オ)敷金受領と罹災法上の権利の消滅(14条等)
→消滅しない<自由vol.47-2p67>


(3)目的物返還と家財搬出義務<法セミ485p15、近Q&Ap22-3>
→原則、搬出しなければ債務不履行。=賃料相当分の損害
→但し、建物の利用が不可能な実態に沿うか疑問も。
→原状回復の問題も<BQ&A2,3>


4.罹災都市借地借家臨時処理法による特則
(1)立法趣旨その他
@罹災都市の借地人・借家人を保護し、罹災都市の復興を促進するため
<法セミ486p32>

A共通の認識として <ジュリp156>
→立法時
→今日

B共通の問題点として<法セミ497p42>
→時代の変化における妥当性→政策目的


(2)14条
@概要 建物優先賃借権<Q&Ap44、近Q&Ap87>
「滅失建物の借家人が、
滅失後最初にその敷地に建築された建物について、その完成前に
賃借を申し出し、他の者に優先して、
相当な借家条件で借家権を取得できる。」
→条文のチェック<WEBQ68>

A問題点<法セミ486p34>
ア)当事者の立場
@)賃貸人側の事情(事前催告権無、期間制限も無)
←賃借人側は10年後権利主張が可能に<近畿Q&Ap89>
A)賃借人側の事情(建築されなければ何もいえない)
←建物の構造を要求することは出来ない。結局あきらめも。

イ)正当事由の判断として<教室175p48>

ウ)実務上の扱い<法セミ486p34、山内p22>
→罹災法上の権利放棄+解決金受領
エ)マンションの問題
オ)具体的な借家条件→罹災法15条


(3)2条
@概要 敷地優先賃借権(自由vol.47-2p68、Q&Ap45)
「滅失建物の借家人が、政令施行の日から2年以内に、
土地所有者に対して土地の賃借を申し出て、
他の者に優先して、相当な条件で借地権を取得できる。」→条文
<WEBQ50>

→正当事由<教室175p49、近Q&Ap46>
→山野目、判例タイムズ982pより
   @、A、B


A問題点
ア)当事者の立場
@)賃貸人:借家権が借地権に変わる点(敷地権者の予期せぬ不利益)
<法セミ486p34>
→借地と借家の価値の違い、社会情勢のちがい。

A)賃借人:高額な権利金を覚悟する点←借地権を取得することから。
→借家人に建築能力・支払能力が必要。

B)相当な借地条件について裁判所による決定(罹災法15条)
<法セミ486p33>
→借地権の設定の際の一時金(権利金)の相場について
※仮に、借地権価格を更地価格の6割とし、借家権価格を借地権価格の
3割とすると
計算式 0.6×(1−0.3)=0.42 →権利金の額の問題。
→そもそも借家が借地になることの問題。
→判断が困難<From95p160>

イ)マンション等について(法セミ486p33)
@)複数の借家人からの申出の優劣(罹災法16条)
A)一人の場合


(4)3条
@概要Q&Ap44-5
「すでにその土地に借地人がいる場合には、滅失建物の借家人が、政令施行の日から
2年以内に、借地人に対して借地権の譲渡を申し出て、他の者に優先して、相当な対
価で借地権を取得できる。」


A2条との違い<近畿Q&A48p44>
→相手方の違い
→賃貸人の承諾(罹災法4条、民法612条)が不要に

(5)紛争の処理<近Q&Ap104>


六、罹災都市借地借家臨時処理法の適用に対する疑問・反対の表明
(1)意見書p3(2)、(3)、(4)
(2)問題点<自由vol.47bQp68>
(3)法律時報67巻9号p33
(4)民商p643、664注(4)
(5)山内p23-24


七、今後について
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